『本屋失格-双子のライオン堂の日々』

双子のライオン堂における日常を綴ります。 http://liondo.jp/

居書店。

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なんだ、これは。
“居書店”
なんて読むのか。イショテンか。キョショテンか。
読み方なんてどうでもいい。
入ってみるか。
「いらっしゃい!」
威勢がいいね。ねじり鉢巻に法被の男性が一人でやってるのか。
壁は一面本棚なんだね。てことは本屋なんだな。
お、壁にメニューがあるが、どうやら食いもんじゃねえ。
「冷えるねえ」大将がこちらを見つめるので、とりあえず時候の挨拶。
「お茶でいいかい」
お茶が出る本屋なのかい。ブックカフェってやつかね。
狭いけど、奥行きがあってお客さん結構いるじゃない。
「大将、ここはなんだね?」聞くは一瞬のなんとかというだろ。
「イショテンだよ」
「どうしてまた?」
さっきまでの堅い大将顏から、笑みをこぼして話だす。
「ほんとかどうかわからないけど、酒屋ってあんだろ。あたりまえだが、酒屋は酒売ってる。で、角打ちってあるだろ」
「角打ち?」
「知らないのかい。角打ちってのは、酒屋の倉庫とか車庫とか空いてるスペースにビールケース積んで、ベニヤ板乗っけたテーブルで酒屋の酒をその場の飲む風習みたいなもんだよ」
「見たことあるある」
「あれが、居酒屋の発祥だっていう話を聞いてね。うちも空いてるスペースに、椅子とか並べてみたわけよ」
「それで居書店なんだね」
大将が大きくタテに頷く。
「いっぱい人がいるけど、景気はどうだい?」
「みんな本は買わないからね。お茶出して赤字だよ」
「なんでやってるの?」
「本屋が好きだからかな。そして、恩返しかな」
「なるほど。ところで、大将のオススメとかもあるのかな」
「あるよ!」
さっき少し曇った顔も、一気に晴れる。
そして、大将はお店の奥に何か取りに行った。

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さて、突然の茶番劇でしたが最近わたしが考えていることを、
小説タッチで表現してみました。

居酒屋ならぬ居書店。

本屋さんは減っています。それでも新しく出来る本屋さんもあります。
今ある本屋さんを眺めてみると、大型店、小型店ともに人が「居る」ことに重きを置いている。
居やすい、人が集まりやすい空間作りに、力を入れてますね。

で、人を集めて本屋はそれからどうするか。
ここに本を絡めていけると、
何か新しい扉が開けるんじゃないかなと思っています。
本屋が本屋である理由を探して。

みなさまが、善き本に出会えますように。